約15年ほど前から、美容を目的として行う美容鍼灸が人気になってきています。鍼灸院だけではなく、高級ホテルのスパ施設や、私が以前働いていた豪華客船内のスパでも人気のサービスの一つとなっています。お肌のお悩みは人それぞれ、また対処方法もさまざまです。エステで解決できるお悩み、美容クリニックで解決できるお悩みもありますが、美容鍼・美容鍼灸の強みは、東洋医学をベースとしてより美容の悩みに合わせた施術で身体の内側からアプローチすることで、自然でかつ根本的な改善が期待できるところです。
日本人だけはなく、海外の方からもとても注目されている美容鍼灸ですが、よく聞かれるそもそもどんな効果が期待できるの?どれぐらい継続する必要があるの?といった疑問についてお話ししていきたいと思います。
美容鍼・美容鍼灸とは
そもそも、美容鍼灸とは、美容を目的とした鍼灸施術をいいます。美容の不調に対して頭や顔といった局所的な刺激や、身体の機能を調整することを目的に全身に対する刺激をする施術になります。
ちなみに美容鍼は、顔面部を中心に美容目的の鍼を行い、お灸は使用しない場合に使われることが多い用語です。
1980年代から美容医学に関心が高まり研究や臨床が行われてきたそうですが、そもそも中国や日本の伝統医療であった鍼灸治療ですが、実は、20年ほど前にアメリカのハリウッドセレブ達の間で注目されたことがこのブームの先駆けなのです。(こちらを参照)
美容鍼・美容鍼灸のメカニズム
昔から、東洋医学では「美容」と「健康」は表裏一体の関係にあり、健康であることによって外見的な美しさを保つことができるとされてきました。そのため、健康上に不調をきたしていると、その状態が外見に反映されて「美」が損なわれていると認識されます。
美容鍼灸では、心身の不調を治療し、回復や維持、増進をはかり、身体の内部から働きかけて外見的な美しさを引き出していくものとなります。そのため、内臓などの根本的な原因改善と症状に現れている「顔」への同時アプローチができるというのが大きな特徴です。
現在わかっている美容鍼灸のメカニズムは4つほどあります。
血行改善
鍼をした部分の局所的な効果として、血行が改善されます。これは、鍼が身体の中に入ってきた際に、身体が鍼を異物として認識し、それを除去しようという反応が起きるためです。血液循環が改善されることにより、くすみが改善、肌にツヤが出て、また、ターンオーバーが促進され肌理(キメ)が整うと言われています。
マイクロトラウマ
薄い紙などで指を切ってしまった時、切れてしまった皮膚をしっかり押さえておくと、傷あとを残すことなく素早く綺麗に治ってしまったという経験はありませんか?
これは、人間の体は、スパッと皮膚が切れた場合、傷跡を残さず綺麗に治るという組織再生能力があります。また、この修復の過程では、お肌のはりや弾力性に欠かせないコラーゲンやエラスチンの産生を促すと言われています。
筋肉へのアプローチ
しわ、たるみの主な原因は、筋肉の収縮による力や重力の影響と、結合組織の加齢的な変化です。そのため、鍼の刺激により筋肉の緊張を緩ませ、動きを改善させてあげることで、シワ・たるみの改善に繋がります。
また、筋肉の緊張は、顔の歪みを生み、また、血液やリンパの流れを滞らせることで、血色不良、肌荒れ、むくみなどの原因にもなります。
ツボへの刺激効果
東洋医学では、例えば、肌荒れ、ニキビや口角炎などは胃腸の働きが弱って切る時に起きやすいといったように、身体のバランスが崩れていると病気や不調といった症状が現れると考えられています。そのため、ツボともよく言われる経穴(けいけつ)に対して、鍼や灸を用いて刺激を与え、身体のバランスを整えることで、症状の改善へと促します。
美容鍼・美容鍼灸の期待できる効果
美容鍼灸の効果の現れ方には2種類あり、施術後すぐに現れる「直後効果」と一定の時間が経過してから現れる「事後効果」があると言われています。また、症状の現れ方は、「直後効果」を強く感じる方、「事後効果」をよりじわじわと感じる方など、人によって異なります。
期待できる効果
- むくみ改善によりフェイスラインがシャープに
- リフトアップ
- 目の開きがよくなりパッチリとした印象に
- 視界が開ける、眼精疲労の改善
- 肌の血行改善により顔色がより若々しく(くすみ改善)
- 肌質改善(ハリ力UP、モチモチ感向上、化粧のノリが良いなど)
- 目の下のクマ改善
- 肌荒れ・にきびの改善
- シワ・たるみの改善
といったことが挙げられます。また、身体に鍼を一緒にすることにより、免疫改善、ストレス緩和などの効果により、相乗的にお肌の状態も改善されます。
美容鍼・美容鍼灸を受ける際の注意点
美容鍼・美容鍼灸は、鍼灸刺激だけで行う自然な美容施術です。安全に施術を行うために、以下に当てはまるかなという方は、事前にご相談ください。
出血やあざができやすい方
顔は、身体よりも皮膚が薄いため、鍼刺激による内出血のリスクは高くなります。(内出血は、1週間もあれば自然に消えます。)
心疾患・脳血管障害などで、抗血液凝固剤などを服用中の方も、出血のリスクは高くなります
重度の偏頭痛がある方
頭部への刺激により血流が改善されたために、偏頭痛の引き金になることもあります。偏頭痛がある方は、施術前にご相談ください。
美容クリニックなどで施術を受けている方
施術の内容にもよりますが、一定期間は施術をさける必要があります。
ー ボトックスなどの注射
ー フェイスリフト
ー 金の糸施術
ー ケミカルピーリング
美容鍼・美容鍼灸の持続性・頻度の目安
症状によっては、1回の施術で直後効果が見られないこともありますが、ほとんどの場合、何回か継続的にケアを続けることで改善されてきます。
また、施術後に感じられる、肌質の改善やモチモチ感の向上、化粧のノリの良さなどの「事後効果」は、人によって異なりますが、通常、2週間程度経つと落ち着いてきます。
その後、施術によって状態が改善しても、生活習慣やストレス、また、老化による身体への影響は続いているため、また元の生活を続けている限り良い状態を維持していくのは難しいと言われています。
施術の効果をできるだけ長く維持していくためには、症状が改善するために理想的には週1回のペース、また、改善後、月1〜2回の程度のペースとなります。
セルフケア
美容鍼の効果を長持ちさせるためには、日常生活でセルフケアを取り入れていくことも重要です。
例えば、PC作業が多く、日常的にスマホ使うことが多い場合、猫背や肩こりになります。猫背などの悪姿勢は、フェイスラインに影響し、若くてもシワ・たるみの原因になります。ストレッチやマッサージで、セルフケアすることで美容鍼施術後の効果がより長期的に継続されます。
また、身体の冷えや胃腸機能の低下は、血行不良の原因となり、目の下のクマや顔の血色に影響してきますので、冷えの改善のためにセルフケアが必要です。
必要なセルフ毛は、人によってそれぞれです。どんなセルフケアが自分に合っているのか知りたい方は、いつでもお問い合わせください。
<参考>
国際抗老化再生医療学会雑誌 WAARM Journal, 2018; 1: 43–52 美容鍼灸
美顔鍼 -美顔率と解剖機能からのアプローチ 土門奏 2015
改訂版 鍼灸師・エステティシャンのための よくわかる美容鍼灸 上野隆勇 2019