鍼灸とは
鍼灸は、東洋医学の治療法の一部で、一般に「はり・きゅう」または「しんきゅう」と呼ばれ、疾患や症状に適した経穴(ツボ)に金属の細い針を刺入したり艾(もぐさ)を置いて燃焼させたりなど、生体に刺激を加えることで元々身体に備わっている病気を治す力を高めて元気にする治療法です。
鍼灸の歴史
紀元前に中国で発祥した伝統医療で、中国医学等の古典的な理論に基づき、中国・日本・韓国でそれぞれ発展してきました。日本には1500年以上前に伝わり、様々な病気の治療や予防に役立ってきました。
現在では、日本・中国・韓国などのアジアだけではなく、アメリカ・ドイツ・フランスなどの欧米にも広がり、世界100カ国以上で採用されており、1997年にはアメリカ国立衛生研究所(NIH)が、鍼灸治療の有効性に関する声明を発表しています。
鍼(はり)
「はり」と聞くと、注射の「針」が思い浮かびますよね。「痛そう…」と、思う方が多いかもしれません。でも、実際に鍼治療で使う「鍼(はり)」は、サイズも形も注射針とは大きく異なり、0.16〜0.20mm程度の細い鍼を使います。日本人の髪の毛の太さの平均は0.08mm程度ですから、髪の毛より少しだけ太い鍼とイメージしてみてください。
鍼を身体に刺すときの反応は、人それぞれです。ほどんど何も感じないという方、軽くチクッと感じるという方と、いろいろなタイプがいらっしゃいますし、その日の身体の状態によっても感覚は異なります。施術がはじまると、身体がリラックスした状態に包まれるのため、眠ってしまう方もいらっしゃいます。
灸(きゅう)
灸は、ヨモギの葉を乾燥させて、葉の裏側のホワホワした部分だけを集めた”もぐさ”と呼ばれるものを使います。よもぎは昔から、殺菌・消炎・保湿効果にすぐれ、止血剤としても使われてきました。灸の方法には以下のようにいくつか種類があり、刺激量を調節しながら、あなたの症状に合わせて熱刺激をあたえます。
アミカ鍼灸院では、主に次の3つの種類のお灸を使っています。
台座灸
台座の上に乗っているもぐさを燃やします。ほんわかしたやさしい熱を感じます。お灸はセルフメンテナンスとして自宅でも簡単にできるため、「セルフ灸」もご案内しています。おうちでもやってみたいという方は、ご相談ください。
直接灸
ピンポイントに熱を入れたい場合に使います。
もぐさを米粒の半分ぐらいの大きさに撚(ひね)り、点火します。少しだけ、チクっと感じる程度の刺激を感じますが、温熱刺激がしっかりと身体に入ります。
筒灸
腰や腹部など、より大きな面積を温めたい時に使用します。
炭化させたもぐさを筒の中にセットし、10分程度かけてじんわりと温めていきます。
鍼灸の効果
鍼灸施術は様々な効果があるといわれています。特に下記のような効果があります。
- 鎮痛作用
- 自律神経調節
- 身体機能を調節する:機能低下している状態を活性化させる作用や、痛みなどの身体の機能が異常に亢進している状態を抑制させる作用が期待されます。
- 血行改善:肩こりなど血流が滞っている患部や症状と関連する部位への施術で、血行の改善が期待されます。
- 免疫力向上:細菌やウイルスなどが体内に侵入した際に身体を防御するのが白血球やリンパ球などの免疫細胞です。鍼灸施術により白血球の数を増やしたり、免疫細胞を活性化させたりすることにより、免疫力が向上し、病気の施術とともに病気になりにくい体質への改善が期待されます。
- 美容:鍼灸施術により新陳代謝を活発にして皮膚の機能改善をはかったり、顔面への刺激で表情筋を引き締めてリフトアップしたりする効果が期待されます。
現在、鍼灸治療を受ける患者さんの多くは、腰痛や肩こり、ひざの痛みを持った方なので、鍼灸は、こうした運動器の症状だけにしか効かないと考える方も多いですが、鍼灸の効果は痛みだけでなく、身体のさまざまな疾患に効果があります。
鍼灸の効果について近年の研究では、鍼灸で身体の一部を刺激すると、中枢神経の中にモルヒネのような役割をもったホルモン(内因性オピオイド)が放出されることが解りました。このホルモンが、痛みを脳に伝える神経経路をブロックします。
また、鍼灸刺激は神経を刺激して血行を促進し、痛みや疲労の原因となる物質を老廃物として排出する作用も持っています。鍼灸刺激は自律神経に効果的に作用し、胃腸や心臓・血管などに作用しその働きを調節します。最近では、ヒトの持つ免疫力を賦活させる働きについても様々な研究がなされ、まだ解明されていない鍼灸の効果も期待されています。
1997 年には、NIH( アメリカ国立衛生研究所) から、鍼灸療法の病気に対する効果とその科学的根拠を認める見解が発表され、WHO( 世界保健機関) でも、様々な症状や疾患について、鍼灸療法の効果や有効性を認めています。
世界でも認められている鍼灸の効果
NIH(米国 国立衛生研究所)による、鍼灸療法で有効性がある病気には、次のものがあげられています。
【神経系疾患】神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリー
【運動器系疾患】関節炎・リウマチ・頚肩腕症候群・頚椎捻挫後遺症・五十肩・腱鞘炎・腰痛・外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫)
【循環器系疾患】心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ
【呼吸器系疾患】気管支炎・喘息・風邪および予防
【消化器系疾患】胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・胆嚢炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾
【代謝内分秘系疾患】バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血
【生殖、泌尿器系疾患】膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎
【婦人科系疾患】更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・血の道・不妊
【耳鼻咽喉科系疾患】中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・ちくのう・咽喉頭炎・へんとう炎
【眼科系疾患】眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい
【小児科疾患】小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善
(鍼灸netより)
鍼灸師の資格
日本で鍼灸施術を行うには、はり師・きゅう師の国家資格が必要です。国家資格の取得には、高等学校卒業後、鍼灸専門学校・鍼灸大学・視覚障害者のための教育機関に3年以上通うことが必要です。そこで医学知識と鍼灸技術を習得し、卒業試験に合格した後、国家試験に合格するとはり師・きゅう師の国家資格が取得できます。
日本鍼灸師会では国家資格取得後の鍼灸師を対象に、講習会やe-ラーニング、研究会など様々な卒後教育・生涯研修を行っております。そのため日本鍼灸師会の会員であれば医学知識、技術ともに一定の高い水準にありますので、安心して鍼灸治療を受けていただけます。